研究内容

尾崎研究室では,有機分子・高分子系の材料を中心として,その電子・光物性を明らかにすると共に,エレクトロニクス、フォトニクスへの応用の可能性を探求しています.

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大阪大学の研究室総覧に掲載のポスター

 電子・光機能性分子・高分子に関する研究

有機分子、高分子は従来電気の流れない絶縁体と考えられてきましたたが、分子内にπ共役系を含む高分子は禁止帯幅の狭い絶縁体或は半導体的な性質を示し、しかもドーピングによって絶縁体-金属転移さえ起こします。 これは、白川英樹博士のノーベル賞で一躍有名になった導電性高分子と呼ばれています。この材料は、基礎科学的に非常に興味深い課題を提供すると共に、種々の新機能応用の可能性を与えるものとしても注目されています。

(a) 導電性高分子の電子状態と電子・光物性

(b) 導電性高分子の光励起状態とフェムト秒スペクトロスコピー

(c) 導電性高分子を用いた分子エレクトロニクス・フォトニクスデバイス

(d) フォトクロミック分子、高分子を利用した新規材料、デバイス

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 分子エレクトロニクスデバイスに関する研究

現在のエレクトロニクスデバイスは、Si、GaAs、GaNといった無機材料を人工的に並べることによって実現されていますが、それらを作製するためには膨大なエネルギーが必要です。一方、それ自体が機能を持つ分子を基本単位とした分子材料は、生体がそうであるように、非常に多様な形態と優れた性質を持っています。この分子材料でエレクトロニクス、オプティクスデバイスを作れば、これまでにない優れた特性のデバイスが実現できる可能性があります。さらに、この様な分子材料で、ナノスケールの構造や複合体を作製すると様々な新規な効果、量子現象が発現し、新しいデバイスが可能となります。

(a) 有機ELデバイス、有機トランジスター

(b) 分子レーザー、分子非線形光学デバイス

(c) 分子量子構造素子

(d) 分子光電変換デバイス、有機太陽電池

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 エキゾチックな高速応答液晶に関する研究

ディスプレイの代名詞にもなっている「液晶」は、実際には固体(結晶)と液体の間に存在する物質の状態です.液晶は一般的には棒状、あるいは円盤状の異方的な形状の分子からなり,分子の並び方によって様々な「液晶相」に分類されています.ディスプレイに応用されている液晶は「ネマティック相」と呼ばれ,棒状分子が集団として一つの方向に並んだ液晶相です.ネマティック液晶の特徴として数ボルトという低い電圧で電流を流さず駆動できる点が挙げられ,低消費電力なディスプレイの実現を支えています.一方で,応答速度が数ミリ秒程度と遅いため,より高精細なディスプレイや光通信などの新しい応用を目指すためには,より高速な応答を示す材料の開発が求められています.私たちは,より進んだ機能を実現するためには新しい材料の開拓,およびその物理的性質を理解することが重要であると考え,ディスプレイに用いられるネマティック液晶とは異なる,エキゾチックな液晶の研究を行っています.

研究対象の一つがコレステリックブルー相と呼ばれる液晶です.コレステリックブルー相はネマティック液晶と比較して10倍以上の高速応答性や光学的等方性などの興味深い性質を示すため,次世代の電気光学材料として期待されています.一方,ブルー相は周期200 ナノメートル程度の複雑な周期構造を持ち,未解明の性質も多くあります.私たちはブルー相の性質を顕微観察法・分光法などにより明らかにし,応用の可能性を探索しています.

コレステリックブルー相の構造の模式図

<参考文献>

  • S. Tanaka, H. Yoshida*, Y. Kawata, R. Kuwahara, R. Nishi, and M. Ozaki, “Double-twist cylinders in liquid crystalline cholesteric blue phases observed by transmission electron microscopy”, Sci. Rep., vol.5, p.16180 (2015). [LINK (オープンアクセス誌)]
  • Y. Kawata, H. Yoshida*, S. Tanaka, A. Konkanok, M. Ozaki, and H. Kikuchi, “Anisotropy of the electro-optic Kerr effect in polymer-stabilized blue phases”, Phys. Rev. E, vol.91, p.022503 (2015). [LINK]
  • H. Yoshida, S. Yabu, H. Tone, Y. Kawata, H. Kikuchi, and M. Ozaki, “Secondary electro-optic effect in liquid crystalline cholesteric blue phases”, Opt. Mater. Express, vol.4, p.960 (2014). [LINK (オープンアクセス誌)]
  • Y. Ogawa, J. Fukuda, H. Yoshida, and M. Ozaki, “Photonic band structure and transmission analysis of cholesteric blue phase II: electrostriction in (100) direction”, Opt. Express, vol.22, pp.3766-3772 (2014). [LINK(オープンアクセス誌)]

 

 液晶におけるソフトマター物理と応用に関する研究

物質科学的には,液晶はディスプレイ材料の枠を超え,ゲルやコロイド,細胞などの「ソフトマター」の一員とされます.「柔らかい物質」の言葉通り、液晶は外部刺激に応答して柔軟に特性を変化させます.この柔らかい性質をつきつめることで、ほかの材料にはない機能を発現させられるのではないかと期待しています.

テレビやスマートホンでは棒状の液晶分子が一様配向していますが,配向を様々な方向に制御することで,異なった機能が現れます.例えば,分子を同心円状に配向させた場合には,光渦と呼ばれる,量子通信やレーザー加工応用などが期待される特殊な光波を生成することができます.また,特定の模様に分子を配向させた場合には,ミクロンサイズの微小な物体の位置を三次元的に制御することができることができます.このような液晶の配向制御を通して,新しい機能を発見し,その仕組みの解明と応用の提案を行っています.

AlignmentControlネマティック液晶の分子配向の例.棒状分子が中心より放射状,かつ対数螺旋状に並んでいると,顕微鏡では上のような像が得られる.

<参考文献>

  • H. Yoshida*, K. Asakura, J. Fukuda, and M. Ozaki, “Three-dimensional positioning and control of colloidal objects utilizing engineered liquid crystalline defect networks”, Nat. Commun., vol.6, p.8180 (2015). [LINK (オープンアクセス誌)]

液晶を用いたチューナブルフォトニック結晶およびプラズモニクスに関する研究

フォトニック結晶とは,光の波長程度の周期を持つ人工的な構造体のことです。原子が規則的に並んだ周期的ポテンシャルの中を電子の波(波長が原子間隔程度)が進むことによってバンドギャップが生じ,それを利用したトランジスターやメモリー、レーザーが実現されているのと同様に,光の波長程度の周期構造中を光波が伝搬すれば,光に対するバンドギャップが現れ,光を自在に制御する光トランジスターや光ダイオードのようなものが実現できると期待されます.

一方,金属はその表面近傍の小さい空間に電界の集中した表面プラズモンポラリトンと呼ばれる表面波を担持できます.表面プラズモンポラリトンは高いエネルギー密度を持ち,波長選択性が高いことから小型,高効率のデバイスに応用できる可能性があります.

このようなフォトニック結晶やプラズモニックデバイスを分子で作る研究,および液晶などの機能性分子を使ってその性質を制御する研究に取り組んでいます.

(a) 分子フォトニック結晶、自己組織化フォトニック結晶の実現と物性評価

(b) チューナブルフォトニック結晶材料、デバイス

(c) 有機・無機ハイブリッドフォトニック結晶

(d) 表面プラズモン共鳴を応用した高効率有機EL、レーザー、太陽電池素子

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